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概要

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ことが大切です。「寂しい」「生活に自信がない」...など、その人が持つ悩みの背景が分かります。そうすれば、そのことに対して、解決の手段を考えることができるのです。自殺防止対策として、各種団体による電話相談などが行われています。しかし、実際に自殺にまで至った人は、そういう相談を利用しない傾向にあります。相談しない一方で医療機関にはかかります。ただ、敷居が高いのか、精神科にはほとんど来ませんが...。そして本人の話をじっくりと聴かずに安易に薬を処方してしまう医師がいます。その処方してもらった薬で自殺を試みたという事例も起こっています。話を聴く過程を省略して、いきなり薬を処方するというのはよくないですね。薬は当然、副作用を伴います。話を十分に聴かないまま、薬のみ処方した場合は、治療への不信感につながります。薬を出す前に、本人が心の奥底に抱えている思いをしっかりと聴き、本当に必要な解決方法につなげる?。非常に大切なことです。しかし残念ながら、そういう人にとことんまで付き合う医療体制は確立していません。自殺者を減らすためには、「医師の意識」を変える体制づくりが必要だと考えます。―自殺防止対策として地域社会では何ができるでしょうか。最も大切なことは「最期までみんなと一緒に暮らしたい」と思えるような環境づくりをすることです。誰でも、独りでいたら寂しいし、生きる目標も失いやすくなります。その結果、「早く死んだ方がまし」というような気持ちになってしまいます。「大事な人生なんだからいかに生きるか」ということを地域・家庭で話し合えるようにすることが望まれます。また、「あなたは掛け替えのない人で、亡くなると悲しむ人がいるんだよ」と本人に伝えることも必要です。悩んでいる人は、精神科などの専門医に、まず行きたがりません。悩みを抱えている人について、普段と様子が違うと気付いた場合、まず話をしっかりと「聴く」ことが大切です。それは、家族や親族だけでなく、近所の人でも構いません。しかし、最初はなかなか難しいことだと思います。そのため、悩みを抱えている人の話をしっかりと聴くことができる地域の「キーパーソン」になるべき人材を養成しなければなりません。「キーパーソン」が中心となって、「こういうことがあるんだけど...」と向こう三軒両隣で気軽に会話できる雰囲気づくりをする?。それが理想です。全国でそういう環境が整備されたら、自殺者数は激減すると思います。ところで、最近、自殺対策の中で「ゲートキーパー」という言葉が使われるようになってきました。その活動内容も「聴く」ことを主にしていますね。―医療でも地域社会でも「よく話を聴くこと」が重要なのですね。そうです。そして、悩みを抱えている人に「役割」「楽しみ」を持ってもらうことも大切です。特に高齢者に効果的なのはデイサービス。最初、「行きたくない」と言っていた人が、2、3回行くと「楽しい」と言うようになります。デイサービスで、ほかの人と会話をすることが楽しいんですよ。本人が楽しく暮らすことで、介護や認知症の予防にもつながります。高齢者が認知症になると、家族は本人を住み慣れた家から離して病院や施設に入れようとします。そういう所に入った後、本人は「帰らせろ」と言い続けます。そして不本意な形で生活しているため、行動障害を起こします。すると「認知症の行動障害」だといって問題視されるようになります。しかし、行動障害の主な原因は環境です。本人の望まない形で余生を過ごさせる?。果たしてこれでいいのでしょうか。高齢化社会を生きる私たち全員で考えなくてはいけません。「その人が喜んで人生を終わる?」。私個人として、これが一番の尊厳であると考えます。繰り返しになりますが、うつ病でも認知症でも、本人が現在住んでいる所でなんとか最期まで暮らしていけるような環境づくりが大切です。そのためには、医療機関だけでなく、地域社会や行政機関との連携を今まで以上に緊密にしていく必要がありますね。―ありがとうございました。6PublicRelations