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15 Kushima City Public Relations, 2012.5, Japan健康マメちしきH e a l t h K n o w l e d g e著:串間市民病院内科医師井上龍二串間市民の皆さんお元気ですか?いきなりですが、皆さんはヘリコバクター・ピロリ、またはピロリ菌(以下、ピロリ)って耳にしたことありますか?胃の中は消化のために酸がとても強い状態にあります。そんな所に普通は何も住めんはずですが、結核菌みたいにやっけなものに限って生き延びています。そして、約30年前に胃の中から今回のピロリが発見されました。その後、ピロリが胃や十二指腸潰瘍をはじめいくつかの病気の原因となることが分かってきました。「何でこげな余計なもんが胃の中に入って来ると?」と思いますよね。まだ分からんことも多いですが幼少時の衛生環境の悪さとの関連が疑われており、日本人の50歳以上の80%位はピロリを持っているのではと言われ、逆に上下水道が完備した若い世代には少ないとされています。「そげなけ腐れもんは全部消してしまえ!」というのが本音ですが、ピロリを持つ全員の方が病気になる訳ではなく、昨今の医療費高騰の問題もあり、その検査や治療(除菌治療と呼びます)で保険が効くのは現時点では、胃十二指腸潰瘍・胃の特殊なリンパ腫、特殊な血液の病気、そして早期胃がんを内視鏡(以下、胃カメラ)で取った方のみで、それ以外は自腹での診療となってしまいます。今の病名でぐっと目を引くのが最後の胃がんですね。ではなぜ、早期のがんを胃カメラで取りきれた人までがピロリを除菌するのか?実は、最近ピロリと胃がんの関係が取り沙汰されているんです。難しい説明は避けますが、要はピロリが胃に住み着きしばらくして胃炎(=胃の炎症)が生じ、炎症が続くとそれを母地にしてがんが発生するという流れです。さらに悪い事に欧米より日本のピロリの方が毒性が強いとも言われています。よって、胃がんができた→カメラで取れた→またがんができないか→ピロリはがんの引き金じゃ→なら消せ、となる訳ですね。となれば、積極的にピロリがいるか調べ、いれば除菌するのが理想で、実際専門家の先生も勧めています。しかし、先ほどの通り保険診療がままならないのが現状なんです。ちなみに除菌治療は、胃薬1剤・抗生物質2剤を1週間服用し、1回目の治療で7?8割方消えますが、消えなかったときは抗生物質を1種類替えて2回目の治療となり、ここまでは保険でOKです(あくまで先ほどの病気の方が対象ですが)。2回目の治療でほぼ大半の方は治療が成功しますが、それでもダメな方の3回目以降の薬の組み合わせは現在検討中の段階です。ただ残念ながら、ピロリを消せば胃がんの発生がゼロになるわけではないので、元々ピロリのいない方、また治療で消えた方も引き続きがん検診は重要です。検診ではバリウムか胃カメラか?と迷う所ですね。結論は難しいですが、バリウム検査は奥が深く難しいというのが実感です。ぶっちゃげ検査する者の上手い、下手がはっきりする検査と思います。一方、最新の胃カメラの画質は驚くほど良く、上手い下手をある程度カバーしてくれるかなと思いますが、見逃し例もあるので過信は禁物ですし、苦痛や危険性ではバリウムに一歩劣ります。最後にどちらを選ぶかはやはり皆さま次第ですね、無責任で御免なさい。ただ、今後はピロリの問題や診断機器の進歩で胃がん検診の姿が変わっていく可能性は大いにあるかなと思っています。最後に一人でも胃がんを減らすためにもピロリは全部やっつけたいのが本音ですが、自費診療の壁が大きくのしかかります。当方、ヘリコバクター学会の認定医で当院は同学会の保険外診療可能施設に登録しており、人間ドックのような形で皆さまに少しでもお安くピロリ診療が提供できないか模索中です。体制を整え串間市の胃がんを少しでも減らしたいと切に願う次第です。力足らずですが、皆さん今後もよろしくお願いいたします。串間の胃がんをお一人でも減らしたいRyuuji Inoue